紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「ふふ……あはは……」
突然笑いだしたコートニーを、アリスが不機嫌な顔でにらむ。
「気でもふれたの?」
「ううん、嬉しいの。
私の人生、捨てたものじゃなかったわ。
最後の最後で、あんなに素敵な人と恋をしたんだもの」
悪魔なのか、人なのか、天使なのか。
なんだか全然わからないけど、オーランドは最高の恋人だった。
たった一瞬だったけれど。
キスしか、しなかったけれど。
あんな最高に面白い相手と出会える確率は、ものすごく低いんじゃない?
神様も悪魔も私を愛してはくれなかったけど、最高のプレゼントを最後にくれた。
ただ、オーランドがこれから受ける待遇を思うと悲しいけれど。
目の前の女がかばってくれるだろう。
彼の弱っているところにつけこんで、うっかり恋人の座に上り詰めるかも。
とてもしゃくだけど、オーランドが寂しくつらい思いをするよりは、ずっといい。
コートニーはくしゃくしゃになっていた髪をほどき、アリスの後ろについて歩きだした。
(見ていらっしゃい、白魔法師たち。
最後の最後まで目を見開いて、あなたたちの心に罪の意識を植え付けてやるんだから)
さようなら、オーランド。
どこかで見ている?
あとで聞かれても良いように、私は悲鳴も上げず、命乞いもせず、潔く逝くわ。
だから。
私の死の灰を抱いて、そっと誰にも見つからないように、少しだけ泣いてちょうだいね。