紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
騎士団の城は、組織と同じように、観光客は来られない山の奥にある。
切り立った崖の上にたった巨大なそれの前には、広い広場があった。
その中心へ、コートニーは誘われる。
「まあ、お約束」
火あぶりの準備に、思わず苦笑いが漏れた。
その様子に、周囲を取り囲む白魔法師たちからのブーイングが聞こえた。
ずらりと並ぶ彼らの中には、見知った顔もある。
言うまでもなく、オーランドの知り合いに親戚たちだ。
誰もが、汚れた血のプリンセスの死を望んでいた。
自分に向けられる、大量の殺意。
思わず、何百年も前に処刑された先祖たちへ思いを巡らせる。
火あぶりならば、まだ良い方だ。
裸にむかれて、男たちになぶられて…もっと残虐な方法もあったと聞く。
そこは正義の味方を自称する騎士団で助かった。
綺麗なまま、オーランドの恋人として、自分は逝ける。
「縛りつけろ」
騎士団長、ランスロットが部下に命令する。
彼らたちはコートニーの体躯を、あっという間に丸太に縛りつけた。
コートニーはその間、悲鳴一つ上げなかった。
(……あら?)
高みから白魔法師たちを見下ろすと、彼女はあることに気づく。
(赤い髪の人がいない)
オーランドの友達の、火の精霊使い。名前は忘れた。
あの人が、いない。
(オーランド、もしかして彼に見張られてる?)