紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
彼の名前を思い出した途端、彼女の足元に火が放たれた。
「見よ!
汚らわしき悪龍の子孫、黒魔法師の血筋を、今絶やさん!」
ランスロットの言葉に、白魔法師たちの歓声が上がる。
枯れ枝が燃える匂いに一瞬たじろぐ。
しかしコートニーは、足元を見ないようにした。
歯を食いしばり、目を見開く。
見るがいい。この体がふくれあがり、因縁にまみれた血が噴き出す様を。
見るがいい。
それでも、世界は変わったりしない。
こんなちっぽけな自分を処刑したところで、何も変わらない。
今だけ、勝ち誇ればいいわ。
この血が枯れ果てようと、この世から恨みも争いも、なくなったりはしないんだから。
それを実感して、失望すればいいのよ。
……ああ、オーランド。
この世界で、あなたとシドだけは、好きだった。
汚いテムズ川が流れるロンドンだって、あなたと手をつないで歩けば、好きな景色になりそうだった。
耳障りなパンクだって、今は好きよ。
太陽に透ける、まばゆい金髪。
スコットランドの晴れた空を映した、スカイブルーの瞳。
あきらめも、怒りも、すべての悲しみをぬぐうくらい、
綺麗だったあなたの笑顔。
あの日舞い降りたのは、間違いなく天使だったのね。
私は、私を誇りに思うわ、オーランド。
だって、あなたに出会えて。
あなたが、私を選んでくれたんだもの。