紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「ヒーロー参上やで!」


いつもならそう言って笑うであろうその天使は、なぜか泣きそうな顔をしていた。


「コートニー……!」


オーランドは火が燃え盛る中、迷わずコートニーに向かって足を踏み入れる。


「オーランド……!」


泣かないと決めていたのに、彼の顔を見た途端、コートニーの瞳に涙があふれた。


ああ、なんてひどい。


まさか本当に火あぶりにされているなんて。


オーランドはその火を消すのも忘れ、縛られたコートニーの頬を両手で包む。


「ごめんな、遅くなって」


どうしてこんなことが平気でできるんだろう。


こんなに、こんなに、普通の少女を、どうして……。


燃え上がるすすで汚れたコートニーの頬をぬぐう。


「怖かったやろ、ごめんな……」


自分が逃げようだなんて言わなければ、彼女がこんな目にあうことはなかった。


好奇と殺意の視線にさらされるつらさは、自分がよくわかっている。


「……オーランド……っ」


ボロボロと涙をこぼすコートニー。


その顔を見たら、もう我慢ができなかった。


「ごめん……」


オーランドは彼女に、触れるだけのキスをした。


「もう……あかん。

我慢の限界、完全に超えたわ……」


コートニーに触れる右手が、紅蓮に染まっていく。




< 186 / 276 >

この作品をシェア

pagetop