紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「ヒーロー参上やで!」
いつもならそう言って笑うであろうその天使は、なぜか泣きそうな顔をしていた。
「コートニー……!」
オーランドは火が燃え盛る中、迷わずコートニーに向かって足を踏み入れる。
「オーランド……!」
泣かないと決めていたのに、彼の顔を見た途端、コートニーの瞳に涙があふれた。
ああ、なんてひどい。
まさか本当に火あぶりにされているなんて。
オーランドはその火を消すのも忘れ、縛られたコートニーの頬を両手で包む。
「ごめんな、遅くなって」
どうしてこんなことが平気でできるんだろう。
こんなに、こんなに、普通の少女を、どうして……。
燃え上がるすすで汚れたコートニーの頬をぬぐう。
「怖かったやろ、ごめんな……」
自分が逃げようだなんて言わなければ、彼女がこんな目にあうことはなかった。
好奇と殺意の視線にさらされるつらさは、自分がよくわかっている。
「……オーランド……っ」
ボロボロと涙をこぼすコートニー。
その顔を見たら、もう我慢ができなかった。
「ごめん……」
オーランドは彼女に、触れるだけのキスをした。
「もう……あかん。
我慢の限界、完全に超えたわ……」
コートニーに触れる右手が、紅蓮に染まっていく。