紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……ぶっつぶしてやる!
こんな汚い世界、全部!」
オーランドは吠えると、コートニーから離れ、白魔法師たちに向かっていく。
「ダメ……!」
静止も聞かず、彼は右腕を空にかざす。
そこに現れたのは、今までとは比較にならないくらい、大きな手のひらだった。
金と黒が混じったそれは、雲のように彼らの頭上を覆う。
「コートニーの代わりに、お前らが消えたらええねん‼」
右腕を振り下ろす。
悪魔の手のひらが、白魔法師たちに覆いかぶさる。
地面が砕け、土ぼこりが起き、悲鳴や血液が舞い踊った。
「オーランド‼」
違う。
こんなの、あなたじゃない。
「オーランド、やめて!
彼らを殺したって、何も良くならないわ!」
「うるさい!」
「……!」
オーランドの声に交じり、不気味で低い音が混じる。
(悪魔が、彼の怒りで完全に目覚めてしまったんだわ)
爪がとがり、一回り大きく膨れ上がったオーランドの右腕から、今まで感じたことのないくらいの邪悪な力を感じた。
それは、カートに匹敵するくらいの……。
(なんて上級な悪魔を吸収しちゃってるのよ‼)
こんな悪魔を召喚したオーランドの父も父だが、吸収してしまったオーランドもオーランドだ。
しかもその力だけでなく魂まで、完全に同化しようとしている。
さらに白魔法師たちに攻撃を加えようとするオーランドを追いかけ、コートニーは焦げた靴を脱いで駆け出した。