紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「どうして……」
最初のオーランドの攻撃で、視界がまだもとに戻らない者や、傷を負った者がいる。
しかし、彼らが動かない理由はそれだけではなかった。
不自然な静寂に、コートニーは違和感を感じる。
(精霊たちが……)
動かないのではない。動けないのだ。
彼らに力を与えるはずの精霊たちの息吹が感じられない。
すべての精霊が、かれらの生まれた別の世界に帰ってしまったように、その場は静かになっていた。
白魔法師たちは、ただ茫然としてうずくまるのんみ。
(オーランドのせいなの?)
悪魔も、自分がかなわない精霊の前では姿をくらませてしまうと聞いたことがある。
精霊たちは、オーランドの中の悪魔をおそれ、いなくなってしまったのか?
「悪魔の子よ!消えるがいい!」
「ぁ……っ!」
考えているうちに、ランスロットがオーランドに向けた銃口が、火を噴く。
銀の弾丸はまっすぐに、オーランドの額を狙う。
間に合わない──。
コートニーが目を覆ったそのとき。
──ドガアアアアッ!
背後からの轟音と爆風が、彼女を襲った。
「なに……っ⁉」
何が起こったか確認する暇もなく、体が何者かに抱かれ、ふわりと宙に浮かぶ。
驚いて目を開くと、そこには自分と同じ瞳の色をしたオーランドがいた。
ランスロットの攻撃を間一髪で避け、コートニーを抱き、少し下がる。