紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「オーランド……あなた、ちゃんとオーランドなの?」
聞いても、返事はない。
オーランドがにらんでいる方を見ると、騎士団の城が、煙に巻かれていた。
さっきの爆発音は、城から発生したものらしい。
いったいどうして?
ランスロットも唖然として、破壊された城を見上げている。
するとそのバルコニーから、何かが弧を描きながら、彼らの目の前に、どさりと落ちた。
「……っ!」
コートニーはオーランドにしがみつく。
声は出なかった。
落ちてきたものは、人間の体だった。
「……クライド……?」
オーランドの声から、不気味な響きが消えていた。
それを喜ぶ暇もなく、目の前に落下した赤い髪の男は、うつぶせのまま、二人の足元に血だまりを作った。
「お疲れさま、プリンセス。
そして、そのナイトよ」
頭上から、甘い麻薬のような声が降ってくる。
人の脳をしびれさせるようなそれは、まさしく……
「カート……!」
コートニーが名前を呼んだその男は、バルコニーに現れた。
隣にはナンシーと、黒豹がいる。
風に吹かれる漆黒の髪に、残酷なほどの美貌を持った彼は、まるでもともとこの城の主であるかのように、そこに立っていた。