紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「よかったよ、プリンセス。君が無事で」


カートは二コリと笑う。唇は完璧に美しい曲線を描く。


「ランスロット様、彼です!

彼が……」


アリスがからからに乾いたのどで、ランスロットに話しかける。


ランスロットは額にシワをよせ、黙ってうなずいた。


そしておもむろに銃を向け、撃つ。


どこまでも届くはずの弾丸は、ただ直立しているだけに見えるカートの魔法で、あっさりと跳ね返された。


「悪いけど、君たちと話すことはないんだ。

そのマヌケな顔を見ているだけでうんざりするよ。

さあ、帰ろうかプリンセス」


ざわり、と空気が揺れた。


白魔法師たちは、気づいたのだ。


カートの力を恐れ、精霊がいなくなってしまったのだと。


「この前とは別人だ……」


フェイのつぶやきが聞こえる。


「今は夜。黒魔法師の力が、最も強くなる時間だ」


ランスロットが、銃を構えたまま言った。


「お前……っ、クライドを、よくも……!」


コートニーを抱いたままのオーランドが叫ぶ。


「しょうがないよ。

そんな下っ端に、大事なものの警護を任せる方が悪い」


呆れたように言ったカートは、胸元からあるものを取り出した。


細い鎖に吊られた逆五芒星が、月光を反射して光る。



「あれは……!」


コートニーの顔から血の気が失われる。


カートが自慢げにぶらさげているのはまさしく、コートニーのペンタグラムだったから。











< 192 / 276 >

この作品をシェア

pagetop