紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「よかったよ、プリンセス。君が無事で」
カートは二コリと笑う。唇は完璧に美しい曲線を描く。
「ランスロット様、彼です!
彼が……」
アリスがからからに乾いたのどで、ランスロットに話しかける。
ランスロットは額にシワをよせ、黙ってうなずいた。
そしておもむろに銃を向け、撃つ。
どこまでも届くはずの弾丸は、ただ直立しているだけに見えるカートの魔法で、あっさりと跳ね返された。
「悪いけど、君たちと話すことはないんだ。
そのマヌケな顔を見ているだけでうんざりするよ。
さあ、帰ろうかプリンセス」
ざわり、と空気が揺れた。
白魔法師たちは、気づいたのだ。
カートの力を恐れ、精霊がいなくなってしまったのだと。
「この前とは別人だ……」
フェイのつぶやきが聞こえる。
「今は夜。黒魔法師の力が、最も強くなる時間だ」
ランスロットが、銃を構えたまま言った。
「お前……っ、クライドを、よくも……!」
コートニーを抱いたままのオーランドが叫ぶ。
「しょうがないよ。
そんな下っ端に、大事なものの警護を任せる方が悪い」
呆れたように言ったカートは、胸元からあるものを取り出した。
細い鎖に吊られた逆五芒星が、月光を反射して光る。
「あれは……!」
コートニーの顔から血の気が失われる。
カートが自慢げにぶらさげているのはまさしく、コートニーのペンタグラムだったから。