紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
(……っのアホ、何しとんねん!)
オーランドが視線を奪われたのは、アリスの背後の小さな窓の端。
くるくるしたブラウンの髪の先が、たしかに見えた。
本人は隠れたつもりなのだろうが、ミニハットが窓枠に乗っているかのように、ちょこんと見切れている。
バレる。このままでは、確実にバレる。
「……あ、あーと、その、ごめん、兄ちゃん。
他に話あるんやったら、やっぱり聞くわ。うん。」
オーランドはしどろもどろになりながら、窓の方へにじりにじりと背中をつけて近づく。
「……いや、ランスロット様の命令どおり、今後も死者の動きを監視してくれ。
そして、その一般人をなるべく早く、騎士団に差し出すように」
少し冷静になったのか、落ち着いた声音でアーロンは言う。
「あぁ、そーですね。はは。
そうさせてもらうわ……」
『組織』の本拠地を一般人に公開してしまったのがバレたら、コートニーと3日間くらい説教されるに間違いない。
へたしたら、自分にもコートニーにも危害を加えられる。
というか、この世から消されるかもしれない。
「……オーランド、お前なんでカニの真似なんかしてるんだ?」
「え、あ、ああ、と……もう秋やから、日本の夏の海が懐かしいな、なーんて……」
日本の学校に行っているとき、大和撫子のスクール水着姿をのぞいていたオーランドは、うっかりそのことを思い出した。
(まりあは制服じゃわからんかったけど、スク水やと胸が大きいんがようわかったわ……ああ、エロかった……いや、楽しかったな、日本)
……そう。油断、したのである。