紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……え、なに?」
アリスの髪の中から、さわさわと羽音がして、オーランドは我に返る。
その水色の髪から飛び出したのは、全身に水をたたえた精霊だった。
アリスと同じ髪、同じ服の色をした彼女は、きいきいとアリスの耳元で騒ぐ。
その爪楊枝の先ほどの指が、オーランドを指差していた。
(げっ!)
オーランドは気づいた。
水の精霊が指差しているのが自分ではなく、その後のアホ小娘だということに。
(気づけ!戻らんかい、ボケ!)
オーランドは後ろ手でしっしと追い払う素振りをしてみせたが、窓の向こうにはまだ完全に気配がある。
「おい、どうした?」
「お前も、なんなんだよ?」
水の精霊に同調するように、クライドの背後から今朝と同じ火の精霊が、フェイの頭の上から地の精霊が姿を現す。
ちなみに地の精霊は、細かい葉っぱでできたような緑の髪と服を身に着けていた。
そして向かいの壁際にいた他のメンバーたちの精霊も、次々に飛び出してギャーギャー言い出し、その場はカオスと化した。
「……誰かいる!」
アリスが叫ぶと、アーロンがオーランドの前に出た。
その肩には、白い髪の風の精霊がいる。
「……聖なる精霊の御名において、命ずる。
悪しき者よ、姿を現せ!」
声とともに白い魔方陣がオーランドの腹に現れ、とっさに彼は身を翻す。
すると魔方陣は壁に投影され、まぶしい光を放った。