桜廻る
「ここがどこか、俺には分からない」
「はい」
「家にも帰れない」
「はい」
「寝床がねぇし、食料もねぇ。ここで知り合ったのも、お前だけだ」
何だか嫌な予感が、
雅の心の中に広がっていく。
「だから…」
「…はい」
「しばらくの間、居候させてくれ」
「……」
沈黙。
雅はこの短い間で、一気に色々な事を考えていた。
「えっと…。お金とか…。そういうの、土方さんの分出せる自信ないんですけど…」
「金は払う」
土方はそう言い、着物の懐から何かを取り出した。
そして、それを雅に握らせる。