王に愛された女



 ガブリエルの不安そうな言葉にオラシオンは涙を拭った。

「オマエは母に似ている。体温も、香りも。それに、顔つきもどこか似たところがある気がする」

 懐かしさと切なさで胸が苦しくなった。また涙が溢れだした。

 ガブリエルの華奢な指が、オラシオンの涙を拭う。

「…それに手料理…。母の作った手料理と味がそっくりだ…」

 オラシオンはスプーンを手放して、ガブリエルを抱き寄せた。

「泣かせてしまってごめんなさい」

 耳元でガブリエルが言った。

「俺の母は俺が三歳の時に死んだ。…オマエは、どんなに時が流れても俺の傍にいてくれ。俺から離れて行かないでくれ」

 オラシオンはガブリエルの髪に顔を埋めた。

「…私には、生きている意味なんてないんです…」

 ガブリエルが悲しそうに言った。

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