王に愛された女
「ガブリエル!?」
ガブリエルは知らないが、どうやら面識がある相手のようだ。
「…誰、ですか?」
寝所に入ってきたのは、銀髪をポニーテイルに結わえた赤い瞳の少女だった。
右上腕部には、ガブリエルのとは形状の異なる刻印が刻まれている。それを見つけた瞬間、ガブリエルの全身を雷撃のような衝撃が駆け抜けて行った。
「覚えてない?アリシアよ。ホッカ村で一緒だった」
ガブリエルは首を振った。
「ごめんなさい、覚えてないです」
「そう…。ホッカ村は?ホッカ村の皆は元気?」
アリシアは来ている服をいじりながらガブリエルにゆっくりと近づいてくる。
「わかりません」
「あなた、いつここに来たの?」
「昨日…です」
ガブリエルが答えると、「ならわかるんじゃない?」と言った。
仕方なく、自分が以前の記憶をなくしたことを話す。
「あら、そうだったの!大変ね」