王に愛された女
フィオーレは息を深く吸い込み、吐き出した。
「不思議なのはそのあとだ。実はさ、俺…今まで黙ってたことがあるんだ。というか、村人ほぼ全員で、オマエを騙してた」
ガブリエルは目を見開いた。
村人ほぼ全員に、騙されてた――?
「どういうこと?」
「俺ら、言ったよな。オマエの刻印のことは何も知らないって」
ガブリエルは頷いた。フィオーレは洗い終わった服を別の籠に放り込む。
「実はさ、知ってるんだ。俺らの父さんミハエルの左上腕部にも、オマエと同じ梵字によく似た刻印があったらしいんだ。ただ、オマエの場合は生まれたときからあったみたいだけど父さんのは大人になってから出てきたみたいだよ」
ガブリエルは何も言わなかった。いや、言えなかったのだ。