王に愛された女
「でさ、俺はてっきり刻印が遺伝するものなんだと思った。けど、そうでもないんだ。さっき言ったフリーゼル伯爵は背中に刻印を持っているけど、その娘であるエリーゼも、孫娘であるメラも、刻印は持っていないんだ」
フィオーレは言いながら違う服を洗い始める。
「…それで…?」
「俺らの父さん以外、生まれたときから刻印を持っている。しかも全員、刻印の形は同じでその…梵字のア字によく似た形だ」
ガブリエルは顔を上げた。
「父さんだけ…なんで後から刻印が現れたんだろうね?」
「俺が思うに…父さんは自分で刻印を作ったんじゃないかな」
「何のために?」