王に愛された女




 ルークは小さな声で呟いた。

「どうかなさいましたか?王様」

 世話役の女人がルークの傍に来て聞いてくる。

「少し、馬車を止めろ」

 そう指示して、ルークは通って行く親子の背中を見つめた。

 少女の長い金髪が腰のあたりで微かに揺れる。

 その姿が、死んだ前王妃に似ていてルークは戸惑った。

 だが、すぐに頭を振り、

「気のせいだ」

 と呟いた。

「……行こう」

 ルークは親子から目を逸らし、女人に指示した。

「はい、仰せのとおりに」

 女人は一礼して、下がって行った。

 直後、王妃と王子が傍に来た。

「王様、何かあったのですか?」

 北国の貴族の娘で、王族に嫁いできたシャーラが尋ねてくる。

「なんでもない」

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