王に愛された女




 アリシアの厳しい口調に、王妃が黙り込む。

「…王様は、まだ生きてます!」

 王妃が、国王に目を向けた。

 王妃が息を呑む。

「ですが、先ほど王様の処刑が決まり、ルーク様が国王になることも決まりました」

 アリシアは、さっき見張り番に聞いたことを話した。

 王妃の青い瞳に涙がにじむ。

「だから、今から私が言うことを聞いてください」

 アリシアは王妃から目を逸らし、牢屋の外に目を移した。

「な、何なの…?」

「今から、あなたと王様を城下町から逃がします」

 王妃が目を見開いた。

「ルーク様には、二人が死んだとお話します。ですから、二人は二度とこの城下町に現れないでください」

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