祈りの月
  確かに、カイは普段よく調査船に乗って、外洋に出ている。

 海水を深度毎に採取したり、魚たちを捕まえて生態を調べるためだ。

 ・・・・・・原始の海に住む生き物たちの、汚染状態は深刻だった。
 
 調査はいくらやっても足りないくらいであったが、努力の甲斐あってか、少しずつ、糸口が見つかりつつあった。

 汚染原因物質が、もう少しで特定される。

 そうなれば、ティルシアの海を救えるかもしれない――ー。

(救えるのなら・・・・・・)

 カイは少女の横顔を眺めた。

 見たことのない顔だ。

 くっきりとした顔立ち、細いあごの線。

 健康そうな、顔色。

 『美しい人々』ティルア人は、皆、透き通るほど青白い肌に、銀色の髪に薄い碧眼なので、この少女は地球人のはずである。地球人とのハーフかもしれないが・・・・・・。

「・・・・・・君は、ティルア人じゃないな。地球人?」

 カイの言葉に、レイアはにこりと微笑んだ。

「いいえ。違う。私はティルア人でも地球人でもないわ。
 私ね、カイにね、どうしても、お礼が言いたかったの。
 ちゃんと、会って、私から」

「お礼?」

 カイは困惑してしまう。

 お礼を言われるような、覚えはなかった。

 だいたい、レイアと名乗るこの少女に、会った覚えもないのに。

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