祈りの月
「うん、なに?」

「月に願いを叶えてもらうのに、見返りが必要だって・・・・・・本当なのか?」

「――うん。本当よ」

 困ったようにレイアが微笑む。

「願いを叶えてもらうには、契約が必要だから」

「何と、引き換えにしたんだ・・・・・・?」

 聞くのが、怖いような気がした。

 人になるという願いが叶うだけの、代償とは、そんなに小さなものではないだろうから。

「・・・・・・たいしたことじゃないわ」

「言えないような事なのか?」

「ううん。たいした事じゃないのよ、ほんとに」

 強い意志をみせて、レイアがかぶりを振った。

 答える気はないらしい。

「――」

 短くため息をつく。拒む相手から容易に答えを引き出せるほど、カイは話術に長けていなかった。

 とりあえず話題を変えてみる。

「この辺の海は、西より少し冷たいんじゃないか?」

 ルキア大陸の方は、この辺りより水温が高いはずだった。

「そうね・・・・・・でもそんなに変わらないかな」
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