祈りの月
「オレもなぁ・・・・・・迷ってる。いくらあっちに家族がいるっていってもな・・・・・・ずっとここに住んでるわけだしさ」

 ドゥリーの家族は、もう三年も前の船でこの星を離れていた。

「それに、地球政府のやり方は気に入らない。結局は、この星に見切りを付けようとしているんだろ。もうティルシアからはたいした資源は取れないしな!!」

 怒りを隠せないように言い放ち、ドゥリーは白衣を脱ぐとバサリと自分の肩の上に乗せた。

「さんざんティルシアを利用したあげくに捨てる気なんだ。海を、こんなに汚しておいて・・・・・・!」

「・・・・・・っ!!」

 ドゥリーの最後の言葉に、カイは痛みをこらえるように息をつめた。

 胸を殴られたような気がした。

 カイの変化に気付いて、ハッとドゥリーが顔を上げる。

「・・・・・・悪い、つい・・・・・・」

「いいよ。気にするな。――俺も同感だから」

 無理やり作った笑顔を見せて、カイはドゥリーの肩を叩いた。友人に、よけいな気を遣ってほしくは無い。

 それに、ティルシアの環境破壊の原因が、地球人にあるのは明白な事実だった。
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