祈りの月
 淡い霧雨が降り続いていた。

 気温が下がってきたのか、少し肌寒い。

 もやのように降りしきる細かい雨の中、ぼんやりとした月影が雨を金色に染めている。街の家々も、金色の粒をあびて、淡く光を帯びたようだ。

 自宅の部屋の窓から外を見ながら、カイは何度目か分からないため息をついた。

 ひどく彼女を傷つけてしまった・・・・・・気がする。

 いや、レイアは傷ついただろう。

 カイの中で、彼女に向けて放った言葉が、何度も繰り返されていた。

 『独りで平気だから』なんて。

 レイアの、悲しげな眼差しをみればそんなことはないと、分かりきっているはずなのに。

 いくら逆上したとはいえ、酷い言葉だ。

(俺は・・・・・・馬鹿だな) 

 彼女を、傷つけるためにあそこへ連れて行ったわけではなかった。

 きちんと真実を伝えて、・・・・・・それで?

 自分はどうしたかったのだろう。

 真実をレイアに伝えることで、楽になりたかったのかもしれなかった。

 ただ、確実な願いは、カイの中にある。

 カイはティルシアの美しい海を、そして、レイアを救いたい。
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