俺様と闘う私『一部・完』
 久しぶりに訪れた駅前は、いつの間にか発展している感じ―――がしなくもない。



 毎日パートに行って、家に帰っておばあちゃんを看て。


 その繰り返しで、買い物すらまともに出かけたことなかった。


 駅前の喫茶店、というのも実は私は知らない場所で……



 どうやら最近出来たようだ。



 駅に向かうと、すぐそばにオシャレなカフェと言えそうな喫茶店が目につき、10分前だけど待てばいいやと思って扉を開いた。



 キョロキョロと見ると―――



 「居た……」



 私はポロリと声に出していた。


 遠めにだけど、ハッキリと分かる。



 久しぶりに見る志貴。


 
 それがなんだか嬉しくて、涙が出そうになった。



 なんか涙腺緩いな私……



 人差指の腹でグッと涙を止めて、顔を上げると志貴が手を上げてこっちを見ていた。



 「お客様」



 と声をかけてくるウエイトレスを無視して



 「志貴……」



 小さく彼の名を呼びながら、私は小走りで志貴の元へ向かった。
< 190 / 213 >

この作品をシェア

pagetop