俺様と闘う私『一部・完』
 近づくとヒョイと手を上げて、堅そうな表情で私を見る志貴が居た。
 

 「久しぶり……」

 「あぁ」



 あんたは返事くらい出来んのか!!

 と、いつもなら言いたい人間だけど。


 今日は流石にそんな気分にならなかった。


 「ホットでいいか?」
 

 なんて聞かれて


 「……ハイ」


 としずしずと答えた。


 何と言うか……やけに、暗い。


 志貴は偉そうだし、俺様だけど暗い奴じゃない。

 
 ―――調子狂う。

 
 「お待たせしましたー」


 少しばかり間延びした店員の声で、私の前にホットコーヒーが差し出され、とりあえず一口頂いた。

 「駅前の喫茶店なんて、いつできたの? 初めてだけど結構いけるね」
 「そうか」

 ……もうやだ。私やだ。


 こんなに話題振ってるのにこの対応。


 がっつり凹むんだけど。


 意外と心の中で久しぶりの再会を喜んでる自分もいたわけで。


 だからそっけなくされると、それが思いのほか胸が痛いと言うか。


 チロリと目をあげて見ると、志貴は私を透かして遠くを見てる、そんな感じだった。

 
 「疲れてる?」
 「少し、な」


 そう言って少しだけ口元を緩めたのを見て、ホッとした。
 

 珍しく弱ってるけど、まぁそれなら仕方ない。


 強張った表情がちょっぴり崩れたから、それに少し安堵した。


 ほんとにちょっとだけど。
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