俺様と闘う私『一部・完』
 私は自分を見て、何か変? と訝しんで奴をみた。

 濃い目のジーパンにほぼ無地のTシャツ。


 ぴったり目でラインはきれいだけど、そのかわり私の控えめなお胸がちょこっと出てるだけで、凹凸もない私の体の貧弱さが目立つかもしれない。



 け・ど!!



 そんなの志貴に関係ないでしょ?


 私は配達にきてるだけだからね!!


 だからどう思われてもいいって思ってきたんだけど。



 なんか今になって『理香らしくていい』なんて言われたら、ドギマギしてきた。



 ―――私、服装なんてどうでもいいと思ってたのに。


 なんか志貴にそれでいいって言われて、嬉しく感じてしまった。


 って、色気はないってとこを念押しされてるのはいかがかと思うけどさ?


 なんだか喜ぶべきか、悲しむべきか訳がわからなくなってきた。


 そんなことを考えて悶々としていたら



 「出るぞ」



 一言そう告げられて、



 「うぁっ、はい! ありがとうございましたっ」



 慌てて私は頭を下げて、玄関を出る。


 そんな私の様子を、微笑ましそうに奴が見ていたなんて当然気がつくはずもなく―――


 今日はよく分からないけれど。


 少しだけ。


 ほんの少しだけ、志貴のことが好きになった気がした。



 もちろん、人として! だけどね。
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