俺様と闘う私『一部・完』
 無理やりに見上げさせられて目に入った志貴が、あまりにもカッコ良くて固まった。



 反則だ、この人。




 ふだんボッサボサの髪して、だるそうな表情して。


 カッコいいとこなんて全然ない様な感じなくせに。


 なのに、こんなの反則じゃんか。


 ダークグレイのスーツに黒目のネクタイ。


 髪も綺麗にあげていて、ふわっと香る香水がよりクールさを出してる。


 深いグレイの瞳が、いつもより深くて吸い込まれそうだ。



 私は赤くなるのを見られたくなくて……


 でも、掴まれた顎のせいで顔が動かせなくて。



 だから視線だけでも逸らしてやろうと必死で目を伏せた。




 「おい」




 上から声が降ってきて、私は体をびくりと震わせた。



 だけど、今日の志貴を私は直視できそうにない。



 どうしよって思った瞬間



 グイッ



 と上を向かされ、ばっちりと目が合った。



 「ちょっ、あ、あの、あの」



 きょろきょろと目を動かしながら、私はあのあのばかり言って、挙動不審な動きをとる。


 それなのに、私にさらに顔を近づけて至近距離で目を合わせてくる志貴。




 もう、呼吸できないっ。


 息止めちゃって耐えられないってばっっ!




 恥ずかしさのあまり、途中から志貴を知らず知らず睨みつけていると、フッと笑われて



 「行くぞ」



 さっと顎から手を離された。
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