澄んだ空の下で

「あ?だれ?」


ツンと鋭い口調が返って来る。


「あ、あの、あたし…」

「え?…あ、あぁ。…若菜?」


恭の声のトーンが少し高くなった。

名前を言ってないのに分かってくれたことに、少しだけほっとする。


「あ、うん…。今、大丈夫?」

「あー…授業中」

「えっ、教室なの?」

「んな訳ねぇだろ」

「ちゃんと行ってんだ」

「まぁ、一応」

「…うん」

「……」

「……」

「…どした?」

「……」


言葉に困ってしまった。

むしろ、あたしから思い出す様な事は言いたくない。


「お前さ、もう一日そこで寝ろよ」

「えっ、でも…」

「そこに居んだろ。手伝いっつー奴」

「うん」

「なんかあればその人がやってくれっから。飯、食えよ」

「そうにはいかないよ」

「帰んな」

「でも…」

「頼みごと聞いてくれるんじゃねーのかよ」

「え?」

「お前言っただろ。ひとつくらい聞くって…紅茶のお礼に」

「……っ、」


そう言えば、そんな事を言った事を思い出す。

だけど、せこいよ。

それを理由にするなんて。
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