澄んだ空の下で
悔しくて、悔しくて、どうしようもなかった。
泣いて縋りつく相手が違うと分かっていても、感情が言う事を聞いてはくれなかった。
恭との電話を切る前に言われた言葉。
“心配すんな。薬飲んでるから”
その言葉が頭から離れなかった。
いつどうやって、どのように飲んだのかも分からない薬。
記憶を失ってた所為で、何もかも状況すら分からなくて。
昨日の事すら曖昧になってた。
でも、そんな事、恭には詳しく聞けなかった。
こんな事、知られた事でさえ嫌なのに、それ以上自分の口からなんて何一つ言えなかった。
だからって美奈子にも相談出来なくて、アオになんて死んでも言えないくらいだった。
その日の夜は、原田さんが作ってくれてたご飯を少しだけしか食べることが出来ず、あたしはひたすらベッドに寝転んでた。
でも、やっぱりその夜は恭は一度もマンションに帰って来なかった。
眠ってたのか目を瞑ってたのか、その曖昧な瞼を開けると、いつの間にか窓から朝日が差し込んで、朝を迎えてた。
身体を起しながら乱れた髪を整え、あたしはそっとリビングに顔を出した。
「…あっ、おはようございます。体調はいかがですか?」
即効あたしに気付いた原田さんは口元に笑みを作り、濡れた手をエプロンで拭っていた。