澄んだ空の下で
暫くして、微かに聞こえた小さな足音に視線を向ける。
「あっ、」
思わず漏らした声と、向けた視線の前に立つ恭が足を進める。
「ちょっと借りてもいいか?」
「え?」
「あっち、工事で入れねぇんだって」
「あー…うん」
小さく呟いたあたしはフェンス越しに下を覗く。
だけども、座っている所為で地上までは見えず、もう一度視線を恭に向けた。
恭は持っていたビニール袋とともに腰を下ろすと、その中から缶コーヒーを取り出した。
…今日は制服。
学校に行ったんだろうか。
でも、なんか不思議。
いつもなら真向かいのビルでお互い屋上にいるのに、何故か今日は同じビルの屋上に居る。
居心地が悪いわけでもないけど、やっぱし慣れない。
昨日の事が頭を過るから。
「…食う?」
不意に聞こえた声に、落としていた視線をもう一度上げると、恭は手に持っていたサンドイッチをあたしに差し出した。
「あ、…いや、」
小さく首を振るあたしを見た恭はスッと視線を外し、包み紙を破る。