僕の可愛いお姫様
「あのまま、いつも通りのまま、私がハシャいで無愛想に瑞穂がやり過ごして。
そうやって、ばいばい、また明日ねって手を触れたら幸せだった。

でも違った…。

私が喋ってる途中でね、『莉世。』って瑞穂が名前、呼んだの。
落ち着いた、優しい声だった…。

こっちが振るまで自分から、なんてあんまり無いから私嬉しくて。
そういう瑞穂をつまらない人だと思った事は無い。
寡黙さが、良いところでもあったから。
でもやっぱり、自分から話しかけてくれるのは嬉しかった。

なのに…。」

莉世はもう、はっきりと泣いていた。
持参していたタオルハンカチで目元を押さえながら、震える声は抑えられないまま、一生懸命語る莉世に、もういいよ、と言ってあげたかった。

傷を抉ってまで語る事なんかないのだと、だからもういい、と。

だけどここで打ち切ってしまえば、中途半端な気持ちのまま、莉世を放り出す事になる。
苦しくても痛くても、これは必要な行為の様に思った。
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