僕の可愛いお姫様
「私も、解らなかった。
目の前の瑞穂が、たった今発した言葉がとても無機質な物に感じて。
何を言っているんだろうって。
『忘れられない人』。その言葉を理解するのに、随分と時間がかかった気がする。」

無理もないだろう。
私でさえ、到底理解が及ばないのに、当事者である莉世が、その言葉をすんなりと受け入れらる筈がなかった。

目の前の莉世はとても小さくて、簡単に壊れてしまいそうな脆さがあった。

瑞穂と交際を始める前、何度か告白するも、その想いが届かない事は、一度や二度ではなかった。
その頃の莉世は、今よりずっと強かった。

それは、「希望」があったからだ。
何度失敗しても、これから先のチャンスはいくらでもある。

必ず掴むという強い意志が莉世にはあって、女性として、莉世は強かった。

今の莉世は違う。当然だ。

「忘れられない人」などと、己よりもずっとずっと想われてきたのであろう、その存在に、動揺だけで済めばまだマシだった。
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