お風呂上がりの望遠鏡
 
車はひっきりなしに通っている。人通りはない。

街灯の明かりを避けるように歩みを早め、街灯の明かりで二人を探す。

偶然の出会いを装うつもり。

アイスクリーム工場を過ぎ、押領司クンの住む賃貸マンションのある筋をのぞき込む。


人影はない。

筋に入ってしまうと、もう言い訳は出来ない。

どうしよう。


辺りを見回すと、タクシーがスピードを緩めて近寄ってきた。
ドライバーと目が合う。


ああ、私は何をやってんだろ。


加奈ちゃんのことを心配してるの?
押領司クンのことを心配してるの?

 

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