従順なふりする、彼は狼。
「…え?」
「せっかく頑張って昇進しても、一番認めてほしかった人には何も言ってもらえなくて」
見透かされている、と思った。
あたしの隆司に対する気持ちも、隆司があたしに対する思いも…。
「でも、俺は先輩が昇進してくれてスゲー嬉しい。ずっと会議がまとまらなきゃいいのにって思うくらい、嬉しいんス」
「ふふっ、バカ言わないでよ」
「バカじゃねぇよ」
突然、神谷君の口調が変わる。
いつの間にかまだ長かった煙草をもみ消していた神谷君は、おもむろに立ち上がり、座ったままのあたしの肩に手を置いた。
とたんに香る、煙草の匂い。
「先輩、スキありすぎ」
「…」
唇を押さえるあたしを見て、神谷君は意地悪く笑った。
従順なふりする、彼は狼だ―…。

