ポケットに婚約指輪

考えを振り切るように頭を振ってアパートに向かうと、人影が見えた。
それと同時に、メールが入る。


【どこに行ってる?】


「……舞波さん」


そのメールを出した人物は、目の前にいた。


「やあ菫。今帰ってきたのか? メールしたばかりだった」

「……なんで」

「今日空いてる? って聞いただろ?」

「空いてませんって言いました」

「でも君は今一人でここにいるじゃない」


スーパー袋からは、お惣菜についてきた割り箸が見えている。
明らかに、自分の為だけの夕食を見られて、恥ずかしくなる。


「入れてくれない? 誰かに見つかるとヤバイし」

「駄目です。何なんですか。もういいよって言ったくせに」


そうよ。あんなにあっさり引いたくせに、何を考えてるの。

ニヤニヤ笑う舞波さんは、私の猜疑心など気にもしていないように間を詰めてくる。


「菫の『駄目です』はいつも別の意味に聞こえるんだよな」

「なっ」

「嫌よ嫌よも好きのうちって言うけど。そんな感じ?」

「……違っ」


否定してるつもりなのに、顔が赤くなるから否定に見てもらえない。
何でこんなに振り回されるの。

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