ポケットに婚約指輪

「駅まで行く? 一緒に行こうよ」

「えっと、……はい」

よくわからないまま、武井さんと並んで歩く。

彼も私と同じくらい飲んでるように見えたけど、お酒に強い人なのかしら、足取りはしっかりしている。
一人だけこんなに酔っぱらっちゃって、なんだか恥ずかしい。


「きゃ」

「おっと危ない」


武井さんの方ばかり見ていたら、道路の側溝にパンプスが挟まってよろけた。

すぐに武井さんが支えてくれたので膝を付かずには済んだけど、腕を支えてくれたことで息が触れるくらいの距離になる。
助けてくれたことに感謝しなきゃいけないはずなのに、司さん以外の人に触れられたことに嫌悪感が湧き上がった。


「すみません。ありがとうございます」

「結構酔ってるみたいだね。少し休んでいこうか」

「いえ、大丈夫です」

「大丈夫じゃないよ。ついておいでよ」


武井さんは私の返事なんかお構いなしで先を歩き始める。

どこか、喫茶店でも入るつもりなのかしら。
なんとなく断りづらくて後をついてきているけど、本当は早く帰りたい。


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