ポケットに婚約指輪

「とにかく頼むわよ。菫、お願い」

「えー」

「アンタ私に逆らう気?」


刈谷先輩の声質と目つきが一気に変わった。
私は背筋がぞっとして、酔いも急速に冷めてくる。


「ご、ごめんなさい。ちょっと酔ってました」

「そうよね。菫に限って私の言うこと聞けないなんてこと無いわよね。ちょっと悪酔いしてるのよ。もう帰ったらどう?」

「は。はい」


慌てて立ち上がる。そのタイミングで、里中さんが先ほどの店員さんと一緒に戻ってきた。


「あれ? どうしたの?」

「え、あの」

「菫は酔ったから帰るって」


戸惑う私の意志を刈谷先輩が決めてしまう。


「お時間があるなら、もう少しお待ちください? こちら特製のレモンジュースになります。さっぱりしますよ」

「え?」

「結構酔ってるように見えたから。頼んできた。刈谷さんは要らないでしょ。まだまだいけそうだし」


何の気なく里中さんが言って、私の肩を押して椅子に座らせる。
そして目の前には、綺麗な細い指によって置かれた、薄い黄色のジュース。

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