好きと言えるその日まで
 試合が終わって、ざわざわとみんなが動き始めたのを上から眺めていた。


 二階で眺めているのなんて私だけだから、誰もこっちを見たりしない。


 知らない人たちが、ちょこちょこと動く様子を見つめながら、時折尚人先輩が視界に映るのが嬉しかった。


 どうしてなんだろう……


 顔がかっこいいとかってことはない、と思う。


 背だって、高くはない。


 先輩がモテるなんて話も聞いたことがない。


 まぁ、そんな人滅多にいないだろうけど。


 だけど、それなのに―――どうしてなのか、私の視界には輝いて見える。


 パッと光ってるのが先輩。


 どんなに人に紛れてても、すぐに目に留まる。


 だから、先輩に目が行ってしまう。


 ずっと。


 好き、だと思う、先輩のことが。


 でも、先輩は私のことは恐らく……と感じるから、これ以上気持ちを膨らませちゃいけないって思う。


 それなのに、名前で呼んだりするから。


 そんなこと、先輩がするから。


 私は一瞬でキュンとなる。


 やっぱり好きだって、思ってしまう。


 いつも通りそっけなくしてくれたらいいのに、こうやってこんなところに連れてきてくれて。


 だから先輩の予定なんて何にも考えずに、お弁当なんか作ってきてしまうんだ。


 何一つうまくいかない私は、ただただ自分のしたいことばかりを押し付けて。


 それで先輩を困らせながら、自己満足ばかりを実らせてしまうんだ。



 ―――断ろう。


 友香って呼ばれて有頂天になりかけてたけど、今日という日に、私のためにこの後の集まりを抜けるだなんてダメだ。


 先輩は責任感があって、後輩想いで。


 みんなの司令塔的な存在で。


 ここに連れてきてくれただけで、十分。


 家までの道のりはちゃんと分かるし、一人でだって帰られる。


 だから、一緒には帰りませんって言おう。


 みんなに囲まれて笑う先輩を上から見つめながら、私はギュッと手のひらを握り込んで決意した。

 
< 66 / 72 >

この作品をシェア

pagetop