赤き月の調べ
一息吸い込んだところで、レジの横に目を向けると、防犯のために点けている明かりの下に、ぼんやりと積まれた段ボールが見えた。
届いたのを、警備員が入れてくれたのだろう。
この日没書店は、午後十一時に開店して、午前四時に閉店。
普通の人向けとは思えない時間帯の営業だけれど、意外なことに客は多く、経営が成り立っている。
店の中には雑誌、小説、専門書が並び、児童書や参考書などの受験向けの本が除かれているため、より多くの珍しい本が置けた。
特に希空が驚いたのは、世界のモンスター標本集だ。
翼を持つトカゲやガーゴイルの、ミイラの写真が載っている。
薬草魔女学初級編や、満月の快適な過ごし方なんて本もあるが、希空は小説にしか興味がないし、すでに一冊づつビニールがかけられていて、内容は分からない。
変わった書店だが、希空にはパラダイスにも等しい働き場所だ。