赤き月の調べ
全てを手に、希空は薄暗い廊下を歩き出した。
店までの廊下には、飲み物とお菓子やパンの自動販売機の明かりはあるが、薄気味悪さは薄まらない。
毎日、仕事で来ているのに、未だになにかが飛び出してくるんじゃないかと、希空はびくびくしている。
狼に、あれほど偉そうに「一人で大丈夫なようにならなくちゃ」と言ったのに、すぐにこの様だ。
可笑しすぎて、大笑いしたくなった。
そんな考えのお陰で、薄気味悪いって気分が少し紛れたのか、店への入口にたどり着いていた。
受け取った鍵で扉を開けて店に入ると、包装につかっている再生紙を利用した茶色の紙袋と、新しい本の匂いが鼻をくすぐった。
希空にとって、この匂いは気持ちを落ち着かせてくれる作用がある。