赤き月の調べ
[三]
結局、朔夜以外の客は来ず、暇をもて余していたからなのか、頭の中には彼が存在し続けた。
ありえない。
まるで、アイドルに熱をあげるティーンエイジャーみたいに、四六時中だれかのことを考える日が来るなんて、来ないと思っていた。
一生一人。
老後も一人。
それが自分の人生だと思っていた。
その将来を思い描いても、寂しいと感じたことさえない。
「意気地無し……」
希空は自虐的に呟いた。
異性や人との関わりに慣れていない自分に腹が立つ。
自分の口からは、接客マニュアルに載っている言葉しか出てこなかった。つまらない女にも程がある。
二度と出会うことのない朔夜を頭から追い出しながら、希空は店内の明かりを消して施錠した。