甘い蜜
「びっくりした?」
1番先に口をきったのは、智哉。
「うん。何も聞いてなかったから」
あたしが答えると、智哉と凛は笑った。
「凛もここに来た時、雅ちゃんと同じ顔してたよ」
ーーーという事は、凛も知らなかったんだ。
「メールくらいしてくれてもいいのに」
凛は口を尖らせて文句を言う。
でも何だかんだ嬉しそうだった。
「飲みに行こうって言い出したのは、俺じゃないんだよ」
智哉は優しい顔で凛を見る。
驚いた顔の凛。
ーーーえ?智哉じゃないの?
きっとあたしも、凛と同じ顔をしていたはず。
「おい、智哉」
余計な事は言うな、と言いたげな翔琉の声が隣から聞こえた。
あたしは咄嗟に翔琉を見たけど、その横顔は髪に隠れて見えない。
笑う智哉の隣で、凛はきっとあたしを見ていた。
満面の笑みで。
でもあたしは、ただ翔琉を見ていた。
ーーー信じられない。
翔琉が飲みに誘ったなんて。
そして、またあたしを指名した。
ーーーどうして…?