甘い蜜
4人分のドリンクが配られたところで、智哉はある話を切り出した。
「じゃあ、もう一つの面白い話してもいい?」
「なーに?」
すかさず食いつく凛に続いて、あたしも頷いた。
「会社の先輩から聞いた話なんだけど」
「ああ、その話か」
翔琉が口を挟む。
どうやら翔琉は知っているようだ。
「この店の近くにあるデカいビル、わかる?」
「カラオケとか入ってるとこ?」
あたしが答えると、智哉は頷いた。
よく仕事帰りに、凛と行く居酒屋が入っているビルだ。
「あ、わかった。あそこね」
凛が答えてから、智哉は続けた。
「あのビルの上の階に小さいBARが入ってるんだ。
そこで先輩達が、怖い話をしながら飲んでたんだけど…」
待って!
怖い話?
ーーーやだ。聞きたくない。