甘い蜜
「腹減ったから、飯食えるとこ行くか」
智哉の提案に、凛は賛成。
あたしと翔琉は、その2人の後を付いていった。
ーーー翔琉も、何も聞いてなかったの?
チラッと隣を見ると、翔琉もこっちを向いて小さく笑った。
「まんまと騙されたな、俺ら」
どうやら翔琉も、あたしと同じらしい。
「やられたね」
そう言って2人で笑った。
ーーーあたしの気のせい…?
店の外だと、翔琉を冷たく感じない。
でもそれよりも、自分が緊張していることに気づいた。
ーーー初めて店の外で会えたから。
あたし達4人は、店の近くにあるビルに入った。
「さすが週末だね」
凛の声に、あたしは頷いた。
混み合うエレベーター前。
酒臭いオヤジ達が、無理矢理エレベーターに乗り込んでいた。
そんな光景を見て、乗る気が失せた。
「この下の階にある居酒屋は?」
凛の問いかけに、あたしは一番に賛成の声をあげた。
一つ下の階なら階段で行ける。