甘い蜜
その冷たい態度に、本当にあたしを指名で良かったのか不安になる。
でも、あたしが差し出した名刺を
「ありがと」
と低い声で呟いて、受け取ってくれた。
チラッと向かいに座る凛を見ると、目が合った。
「びっくりした?」
その顔は、悪戯に笑っていた。
凛の隣に座る、短髪の男も笑っている。
「うん。どういう事?」
ーーー状況がわからないのは、あたしだけ?
「この人は智哉。
あたしの中学の時の同級生なの」
凛は短髪の男を、智哉(ともや)と紹介した。
ーーー智哉は優しそうな人だ。
凛に向ける笑顔は、もっと優しそう。
あたしは中学時代の凛を知らない。
でも凛の顔はなんだか嬉しそう。
ただの同級生ではないようだった。