甘い蜜
凛が短髪の男の隣に座ってるということは、あたしを指名したのは彼だ。
翔琉と呼ばれていた彼。
そしてさっき目を離せなくなった人。
一度も話したことがないのに、指名してくれたんだ。
驚きと一緒に、あたしは嬉しかった。
長い髪に隠れて見えない彼の横顔に、
「失礼しまーす」
そう言って翔琉の隣に座った。
状況がわからないまま、あたしは名刺を差し出した。
「はじめまして、雅です」
すると、翔琉がこちらを向いて目が合った。
ーーー綺麗な顔。
さっき見たあの顔が、いま隣にある。
そして、またあたしは目が離せなかった。
隣に座る、翔琉に。
でもそれは一瞬の出来事。
すぐに目をそらしたのは翔琉。
ーーー…え?
なんか、冷たくない?