甘い蜜


「翔琉の負けー!」


3回連続で負けた翔琉に、あたしは濃いめの緑茶割を手渡す。


「翔琉、ゲーム弱いんだね」

あまりの弱さに、あたしは笑いが零れる。


「…お前らが強いだけだろ」

そう言って翔琉は、グラスの中の酒を飲み干す。



ーーーよかった。

ゲームを始めて、さっきよりは翔琉と普通に話せるようになった気がした。



「めっちゃ濃いんだけど、この酒」

空になったグラスを、あたしに返す。

「負ければ負けるほど、濃くなるの」

あたしはグラスを受け取り、悪戯に笑った。


「じゃ、次負けたらロックな、翔琉」

智也が口をはさみ、凛が笑う。


「俺が勝ったら、お前ら3人ロックだからな」

翔琉は勝つ気満々で、4回戦目のスタートをきった。



「…ぷっ」

「まじかよ」

見事4回連続で敗北の翔琉に、あたしは焼酎のロックを手渡した。


「翔琉、ワザと?」


ロックを一気に飲み込む翔琉に、智也が茶化す。


「智也ももっと飲めよ」


翔琉が智也のグラスに焼酎を注ぎ込む。

「あ、ばか。やめろって」

二人のやりとりに、あたしと凛は笑った。

< 9 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop