Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】
「彼はこう言っている。
昨年、コンクールで優勝した宮向井君。
君を一年間の交換留学生として
音楽院に迎え入れたいと。
私もその為に、
親友の居る母校に来ました。
幸いもうすぐ終業式。
八月から、ウィーンにいらっしゃい」
エルディノさんの言葉を訳して、
通訳してくれたのは紫音さん。
そして紫音さんからも、
留学のお誘いの言葉を頂いた。
「宮向井君。
今回の留学についてですが
留学中の費用は、渡航費・学費につきましては
コンクールの賞金として無料になります。
一年間の滞在先ですが
紫音が宮向井くんの後見を務める形になります。
滞在先は、高臣の手配でDTVTのメンバーである、
惣領【そうりょう】家がいいだろうと言うことで、
そのように手続きしています。
滞在費用につきまして、
毎月、一定金額を学院から渡します。
それを超える生活費用については、
各自の負担です」
っと、理事長は言葉を添えた。
唯ちゃんは、
終始思いつめた表情のままで。
その日、俺は即答することが出来ず
理事長室を後にした。
終業式までに返事をしてくれたらいいと、
エルディノさんと、
紫音さんは言ってくれた。
夢にも思ってなかった話。
俺自身の転機?
その話に心が動く俺も居る。
今はAnsyalも
活動休止中。
Ansyalが
活動していたら
俺の選択肢は、
諦めることしかない。
だけど今は……。
本来なら、
即答して答えるべきなのかもしれない。
行きたいと思う、俺自身の心を
感じながら理事長室を後にした。
自宅マンションに帰宅した俺は、
託実さんに電話した。
「亀城です」
すぐに託実さんの声が
電話の向こうから聞こえる。