副社長は溺愛御曹司
と、気をとり直す間もなく、ヤマトさんが乗りあげてくる。

さすがにその胸に手を突っぱって、押しとどめた。



「ひと息、つかせてください」

「してからなら、いくらでもついていいよ」



してからって。

日曜に、デートの約束をしたばかりじゃないか。

なのに今日、こうして誘われただけでも驚いてるのに。

家に入るなり、これ?


あぜんとして、覆いかぶさるヤマトさんを見あげると、予想外に真面目な顔とぶつかった。

あのね、とその顔が言う。



「神谷、この間は、要するに俺が、ちょっと出来心で手を出したと、思ってたわけだろ」

「まあ…ある意味では、はい」

「それが、本気で嫌なんだよ」



早く、塗りかえたいの、と言って、返事をする間も与えず、唇を重ねてくる。


すぐに、遠慮なしに深くなったそれを受けながら、うーんと考えた。

そもそも、女の子を切らすとか切らさないとか言ってる人に、そんなことを嫌がる権利が、あるんだろうか。

あの時、私があの言葉を本気にとれなかったのは、彼のそういうところを、なんとなく感じていたからなんじゃないだろうか。

いや、それはないな、残念ながら…。


純真で爽快な照れ屋のスポーツマンとばかり思っていたのに。

なんだろうこの、微妙な、だまされた感は。

結局は、見抜けなかった私がダメなのかな?



おい、と頭にごつんと衝撃が来て、はっと我に返った。



「考えごとしてただろ」

「すみません…」



しまった、キスが終わっていたことにも気づかなかった。

頭突きをしてきたヤマトさんに、じろりとにらまれて、つい小さくなる。

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