副社長は溺愛御曹司
肌が触れあうのが心地よくて、私も背中に腕を回す。

強く抱きつくと、希望が伝わったらしく、たっぷりと濃厚なキスが、唇に返ってきた。



「塗りかえるの、大変だなあ」

「こっちの台詞です」



俺は別に、誰にも染まってないよと言ってから、墓穴を掘ったことに気がついたらしいヤマトさんは、再びキスをしてごまかす。

遊ぶように音を立ててくり返されていたキスが、何がきっかけなのかわからないけれど、ふいに強さを増した。


思わず逃げたくなるくらい激しいキスに、息が上がる。

けどヤマトさんは、私の腰と肩をがっちり抱いて、のしかかるように唇を重ね。

あんまり苦しいので、私がひざで脇腹を蹴りあげるまで、一瞬たりとも離してくれなかった。



妙なことに、私は。

前回よりも、今回のほうがよほどあがってしまい、なんだか終始、ドキドキと落ち着かない気分だった。

ヤマトさんの背中が汗ばんでくるのを感じると、それに腕を回すのすら恥ずかしくて。

肩につかまるのがやっとというありさまに、自分でうろたえる。

当然ヤマトさんもそれに気がついたらしく、身体を離すと、満足げに、ふふんと笑って見おろしてきた。



「違うだろ。これきりって思ってるのと、そうじゃないのと」



何を偉そうに、これきりって体験を相当してきた人だけが言える台詞じゃないか、それ、と歯噛みしつつも。

確かに全然違ったので、正直にうなずくと、やけに満足げに、ぎゅっと抱きしめられた。



暑いなあ、この部屋。

違う、ヤマトさんの身体が、熱いんだ。

なんでだろう、筋肉の量だろうか。

彼の身体は、ひたすら熱い。



シーツに投げ出した、私の腕の内側を。

ゆっくりとなぞるように、ヤマトさんの手が動く。


やがて、手と手が重なりあうと。

指を絡めて、強く握ってくれた。



その手のひらの熱は、キスよりも鮮烈に、彼の心を私に伝えて。



もしかしたら、初めて、心から。





私は、この人に想われていると、感じた。





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