副社長は溺愛御曹司
例によって、ヤマトには、ふたりが入れ替わってもわからないくらい、顔の印象がまったく入ってこず。

こういう時の常で、会話の初動は、兄に任せることにした。



「友達?」

「そう、同僚なんです。おふたりは?」



兄弟だよ、と延大が応じると、女性ふたりが、えーっと華やかな声を上げた。

女性って感じでもないな、まだ女の子って感じだな、と印象を修正する。



「全然、似てないですね」

「そうだけど、ほんとに兄貴なんだよ」



隣の子が、明らかにヤマトに言ってきたので、やむなく、目鼻のはっきりしない、ぼんやりした像に向けて、そう答えた。

認識できないけど、勘でわかる、可愛い子だ。


いつものごとく、どこを見ていいのかわからないので、テーブルに目をやると、彼女のグラスが空に近いことに気がついた。



「何、飲む?」

「何、飲んでるの?」



適当に頼んだのでよく覚えていないけれど、テキーラベースの何かだったはず、と答えたら。

彼女が楽しそうに笑って、私もそれがいいな、と言った。



「サンセットだろ。俺がとってきてやるよ」



延大があきれながら立ちあがり、彼の隣に坐った子をつれて、バーカウンターへと向かう。

とり残されたヤマトは、ロックグラスを傾けながら、隣の気配を観察した。


こういう場だから、ちょっと軽くふるまってるけど、たぶん、そこそこ知的な子だ。

歳は、3つか4つ下だろう。

神谷の少し上くらいだ。
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