副社長は溺愛御曹司
「つまみ、切れちまったな」
「カズ、なんかつくってよ」
「どういう感じの?」
片手で食える、しょっぱい系、とリクエストすると、了解、と弟がキッチンへ立った。
器用な和之は、そのへんにあるもので、さっと何か一品つくったりするのが上手だ。
母親が働いていたので、3人とも料理はできるけれど、凝り性なためか、和之が一番上達した。
「うちの会社、どう?」
「いいと思うよ。物理的な環境も整ってるし、福利厚生も、悪くないんじゃない、他を知らないけど」
経営者のはしくれとして、従業員の声を聞いてみたく、ちょっと尋ねてみると、キッチンの和之が、肩をすくめた。
「ただ、人は、もうちょっと、会話能力を高めたほうがいいね。特にプログラマ」
「どんな時、そう思う」
「元プログラマの管理職が、人見知りして、部下とうちとけられないような時」
自分のことじゃないとわかってはいても、ぐさっと胸をえぐられるような指摘だった。
ヤマトの受けた衝撃に気がついたのか、延大が、煙草をくわえて、面白そうにこちらを見る。
和之は気がつかないようで、流しの下からなにやらとり出しながら、続けた。
「ちょっとハキハキしてて、服とか気を使ってるような奴が部下にいたりすると、引いちゃって、全然話しかけらんないの」
そんなんで、成績の査定するほど、部下のこと理解できるの? って感じ。
そうぼやく弟に、あ、よかった、自分、それはない、と胸をなでおろす。
でも、和之の言っていることは、わかる。
プログラマ上がりだけにとどまらず、企画出身の管理職にさえ、内向的で、対人関係があまり得意でない人間が多い。
「まあ、開発部門てのは、どこでもそんなもんだと思うけどね」
「うちはパイが小さいから、そういう人間も、上に行かざるを得ないんだよな」